「そろそろ時間ね。Bグループは揃ってる?Aグループと交代して」

「はーい」

向坂さんの言葉で動くAグループとBグループ。



「お疲れ!」

「ああ、頑張れよ」


互いにそう声をかける。





私たちは、今日はもう仕事に当たらなくていい 。

これから高校最後の文化祭を堪能する。



「仁、どこへ行く?」

「真理が行きたいところでいい」

「ありがと。お腹減ったから食べ物系に行きたいなー」

「なら、野球部のところへ行かないか。後輩たちの姿も見たいし」

「野球部?何を出してるの?」

「フライドポテトと唐揚げ」

「へえ」

「行ってくれるか?」

「うん!」






野球部は駐車場の端で出店していた。

「っしゃいやせっ!!(いらっしゃいませ)」

「フライドポテトいかがですかっ」

「唐揚げもありゃっす(あります)」

「ソフトドリンク100円でっす!!」




全力で客引きする野球部員。



「おう、来たぞ」

「仁先輩!!しゃっす!!(お久しぶりです)」

「おう、元気そうだな」

「しゃっす!!(はい、元気です)」

「フライドポテト1つと、コーラとミルクティー」

仁、私がミルクティー好きなこと覚えてたんだ…

「しゃっす!!(ご注文ありがとうございます!!)激辛、いかがっすか!!」

「激辛か…」

どうする、目で尋ねてくる。

「激辛は」

ちょっと…と答えようとしたけれど

「しゃっす!!(ありがとうございます!!)激辛1入りまーす」

「激辛入りまーす」

復唱する部員たちに否定などできなかった。




「お待たせしゃっした!!(お待たせしました)ポテト激辛とコーラとミルクティーです!!」

「センキュ」

「ありがとう…」

「しゃーしたっ!!(ありがとうございました)」






勢いの良い野球部員に終始押されまくった私。

しかも激辛とか…



「ん」

仁にポテトの入った紙コップを差し出される。

「あー、ありがと」

せっかく仁が買ってくれたんだし、嫌そうな顔はしちゃダメだ。

できるだけ顔に出さないようにしてポテトに手を伸ばす。

「っ!!」

ちょ、これ、めっちゃ辛いよ!!

「ん?どうした?」

「ひゃー」

「は?」

「ひー」

「なんだ?」

「ひょひょ…」

完全に頭に?が並んでいる仁。

なんとか呑み込む。

「すっごく、辛い!!ひゃー!!」

まだ口の中も喉も焼けたように痛い。

「そんなに?」

「ひゅん…」

「これやるよ」

仁が飲んでいた缶コーラを私の口元へ持っていく。



え、ちょ、間接キス…?

でもそれより口めっちゃ痛い!!

仁のことだから、何にも思わないよね…?



「ありがと」

差し出されたコーラを飲む。

「ひー…」

まだちょっと痛い…

「ミルクティーも飲むか?」

「うん」

プルトップを開けてくれる。

「ありがと」

ふぅ、やっとマシになったよ。

「ねえ、仁はこれ辛くないの?」

「別に」

「強いなー」

「でも喉乾いた」

「え」

さっき仁のコーラ全部飲みましたよ…?

あ、でも私のミルクティーならまだ残ってる。

いやでも。

いやいや、そんな、下心なんて。

そ、そうだよ、下心なんてないんだから!

「仁、これ」

ミルクティーを差し出す。

「え?」

「私がコーラ全部飲んじゃったし…買うのももったいないじゃん?」

「真理はいいのか?」

「いいよ、私もう口の中痛くないし」

「…そうか。センキュ」

仁がミルクティーを飲む。



さっき私もしたところなのに、なんか間接キスって、うん。

照れる!!

あと、仁の横顔イケメンすぎる。

反則だよ。



「つ、次どこいく?」

あー、もう、照れ隠しだよ!!

「ああ、スタンプラリーでもするか?」

ふっと仁が微笑む。

マジイケメン!!

仁と一緒ならどこでもいいよ






あれこれしているとすぐに日は傾いた。

「早かったな…」

ちょっと物足りなかったりして。

「ああ、でもまあ模擬店の満足度1位に選ばれたし、良い日だったな」

「そうだね」


ほんとに。

最後の年で投票1位になって、仁と一緒にまわれて幸せだ。


嬉しい。




だけど。



この幸せって、なんなんだろ。


この嬉しさって、彼女として、なのかな?