「真理、パス」
「ありがと」
仁からパックに入った焼きそばを受け取る。
「お待たせしました。お買い上げありがとうございます!またのご来店をお待ちしています!」
この滞りのない連携プレー!
私の頭の中に「お二人の、初めての共同作業です」というアナウンスが流れる。
そうやって、どれくらいの時間がたったのだろうか。
とびっきりの笑顔で次から次へとやってくるお客さんをさばいていく。
またのご来店って言ってはいるけど、大盛りの焼きそばを2回も買う人っているのかな。
「あ、お箸2膳ください」
「ありがとうございます!2膳ですね。どうぞ!って、愛!…と、広田」
「えへへ、来ちゃった」
「よ、仁に佐山」
久しぶりに登場しました、バカップル愛&広田。
「なんだ、あんたたちか」
「客に向かってあんたってなんだよ」
「お客さんじゃないでしょ、身内じゃん」
「けっ、せっかく来てやったのによ」
「って広田は言ってるんだけどね、ほんとは真理と仁さんのことが心配だったんだよ」
「お、おい、愛…」
「心配?何が心配なの?」
「俺も知りたい」
仁も焼きそばを作る手を止めずにこちらに顔を向ける。
「それはね、」
「いや、お客さん待たせたりしてないかなって思って…抜き打ちテストだよ!!」
「わざわざありがと、広田」
「おう、気にすんな」
「頑張ってねー」
言うだけ言ってフラフラと二人はどこかへ行ってしまった。
「くそ、あの二人め。お箸二膳も渡さなければ良かった…」
「はは、まあいいじゃん」
わかってる。
広田が私と仁が付き合ってるのにまるでそうじゃないことを気にかけていることくらい。
たぶん私が仁と話さなかったり隣じゃなかったら、広田が上手く言って二人にしようと仕向けるつもりだったんだろう。
気持ちはすごく嬉しいけど…。
やっぱり、私たちって、
表向きだけの関係なのかな…
仮面の彼女、みたいな…
形だけ、偽りの。
彼女らしいことなんか一つもできてない。
これって
ほんとに付き合ってるのかな…?

