そして、文化祭当日。
昨日の皆の働きのおかげで、材料はなんとか用意することができた。
今、文化祭の開始の放送を全員が待っている。
「いよいよ、ね…。皆、売上1位目指して、頑張るわよ!!」
向坂さんの目が怖い。
「いーっ!!」
すっかり向坂さんの手下になった男子たち。
「売って売って売りまくるよ、向坂女史。」
眼鏡を上げて不敵に微笑む片桐くん。
そして―
「皆さん、おはようございます。本日は非常に天気も良く、絶好の文化祭日和と言えましょう。各クラス、各クラブ、素敵なブースを作り上げたことでしょう。売上1位目指して、頑張ってください。」
「長い…」
「早くしろよ」
生徒会長の長い開会宣言に、待ちきれない皆。
「えー、それでは、只今より、文化祭を開催いたします」
その言葉とともに、一気に動き出す。
「っしゃ!!やるぞ、5組!!」
「おー!!!!!!」
「1位取るよ!!」
「これが男の焼きそばだ!!」
誰からともなく声を出し合い団結する。
よし。頑張ろう。
「Aグループの人、すぐに持ち場へついて。笑顔と挨拶を忘れないように」
「はーい」
「うぃー!!!!!!」
向坂さんの号令で一斉に担当場所へ動く。
私は焼きそばをお客さんに渡す係だ。
果たしてこれを仕事と呼んでいいのか…
ちなみに仁は調理係。
ただそれっぽいってだけで選ばれた。
実際のところ仁は料理はしない。
「仁、頑張ろうね!!」
「おう」
「仁のことだから、練習でもしたんじゃないの?」
冗談めかして聞いてみた。
「ああ、選ばれてから毎日作った」
「え、ほんとだったの!?」
やっぱり真面目だな…
「家族に食べてもらったら好評だったし結構自信ある」
「そうなんだ!!期待しとく」
「おう」
ああ、幸せ。
仁と話せて、一緒に笑えて。
暑さとかもう何にも気にならないよ。

