「俺は時任守(トキトウ マモル)、28歳」


ぶっきらぼうにそう言い放つ守も、一応は哲夫の言う事に納得したのだろう。


言い終わると同時に、由里子へと次はお前の番だ。という視線が突き刺さる。


「あっ、私は川瀬由里子です。23歳で、OLです」


慌てて自己紹介をした由里子の言葉に嘘は無い。


ただの事務をしているOL。


残業なんて殆ど無くて、定時の夕方6時には退社するという近年稀にみる良職場に勤めている。


至って普通。


強いて言うならば、一般的な日本人の顔の作りより顔の彫りが深いという事位だろう。


言い終えた後に、緩いパーマをあてている茶髪の髪を指先にくるくると巻き付けてはそれを指から外すという事を繰り返しながら、自分の生活を振り返る由里子。



好条件の職場に勤めていたし、彼氏だっていた。

姉とも仲が良かったし。姉の子供のダイスケ君だってなついてくれていた。

結婚こそまだしていないけれど、それなりに幸せな毎日を過ごしていたと思ってる。

のに、この現状は幸せとはかけ離れてるけど。



直ぐに目の前の奇妙な現状へと戻ってしまった意識に溜め息を吐く由里子を他所に、哲夫が顎に右手を添えて「うーん」と唸り声をあげた。