由里子の目に映る桜はどう若く見積もっても40歳位にしか見えない。
目の下に隈をつくり、やつれた顔をした桜は、自己紹介を終えるとキリッと自分の右手の親指の爪を噛んだ。
不安の表れなのだろう。
哲夫から順番に自己紹介をしていっている為、次は金髪の男の番だ。
なのに、
「これ、俺も言わなきゃなんねぇのかよ?」
不満顔でそういうその男。
それを哲夫がフフッと鼻で笑った後に、口を割って入った。
「名前位は知っておかないと、呼ぶ時も不便だと思うよ。私達はここに閉じ込められているみたいだからね。それにこの状態での情報は少しでも多い方が良い」
確かに哲夫の言う通りだ。
ここに居る5人は今、手足を繋がれたという同じ状態でこの5角形の部屋に閉じ込められている。
名前もだが、知っている情報は少しでも多い方が良い。
ただ、ここに居る人の中に閉じ込めた犯人がいなければ……の話だけど。
そこまで考えた所で由里子がふぅっと息を吐き出した。