そこまで言って由里子が哲夫から顔を離した時、右手にお茶の2リットルペットボトルと、左手に紙コップが何個も入った袋を持って桜が部屋から戻って来た。
「お、お待たせしました」
「いや、焦らなくても大丈夫だよ」
慌ててそう言う桜に哲夫が声を掛ける。
その声に気付いてか、修二と守がゆっくりとした足取りでこの部屋へと戻って来た。
「部屋、変わってた?」
由里子は修二と守を交互に見ながら訊いたのだが、答えてくれたのは修二だけ。
「いえ。何も変わってませんでした」
「そっか……」
特に期待はしていなかったが、実際にその答えを聞くと先が見えない事にズンと気分が沈む。
そんな空気を払拭するように桜が明るい声を出した。
「全員飲まれますよね?」
「頂くよ!」
「僕も頂きます」
「俺も」
次々に上がる声に続いて「私も」と由里子も返事をする。
この緊迫した状況に全員が飲み物を欲していたのだろう。