ーーーーー
「何だよ、罪ってたかだか不倫かよ」
自分の罪にキリッと親指の爪を噛んだ由里子の耳に聞こえてきたのは、由里子の罪をどうでもよさそうに守が発した声だった。
余りにも軽い物言いに思わず、
「えっ!?」
と、驚いた顔を守に向けるが、逆に守が首を傾げる。
由里子にとっては大事だった。
だが、守にとってはたいした罪ではない。
そして、たいした罪ではないと感じたのは守だけではなかったらしい。
「まあ、たいした罪じゃないね」
「不倫をしている人なんて何千人といますしね。罪だ!って言われる程のものではないかと僕も思います」
「そ、そうですね」
苦笑している哲夫に続いて修二、そして同じ女性の桜までそう答える。
感覚の違いというやつだ。
ある人にとってはとても大きな罪でも、別の人にとってはたいした罪じゃない。そういう事はままあること。
「そ、そっか……」
苦笑しながらそう言う由里子の肩が、ぐたっと落ちる。
何を言われるだろうかと張っていた気持ちがプツンと切れたのだ。


