それを待っていたかの様に再び男が口を開いた。
「私は、山橋哲夫(ヤマハシ テツオ)。40歳だ。普通のサラリーマンだ」
確かに、ピシッとした紺のスーツに、紺と白のストライプのネクタイをしている見た目からしても、哲夫はサラリーマンという雰囲気を醸し出している。
「じゃあ、次は僕が」
そう次に口を開いたのは、哲夫の左側の壁の前に座っていた男だ。
彼も哲夫に倣ってか、立ち上がると自己紹介を始める。
「僕は赤坂修二(アカサカ シュウジ)です。19歳か20歳かは分かりません。いつもはずっと家に居ます」
スラッとした体系だが、肩より少し短い程度のぐしゃぐしゃの黒髪の修二。
ただ、自分の年齢が19歳か20歳か分からないと言う修二の言葉に由里子が首を傾げた。
「えっとさ。修二君は自分の年齢が分からないの?」
そう由里子が訊いてみると、由里子の方を見ながら修二が首をゆっくりと横に振る。


