小刻みに震える指先で椅子を差している様子から察するに、守はかなりの小心者だ。



ほんと、……格好悪い。



「なら、私が置いてきてあげる」


守の方へと近付いてスッと手を差し出す由里子。


だが、守は唇を噛むだけで何も言わない。


「私じゃご不満かしら?」

「なっ!」


由里子がそう言いながら、ニヤッと馬鹿にして笑えば直ぐに怒りを露にしてくる。


良くも悪くも分りやすい。


「お前ら、絶対に勝手に取るなよ!」


威嚇するように全員を睨み付けそう言いながら、守が由里子の手へと鍵と紙を落とす。


受け取った鍵と紙を由里子はギュッと握り締めると、小さな溜め息を漏らした。


「全く。……誰も取らないわよ」


そんな言葉と共に。


特にその椅子に近付く事で、何かが起こる事は無いだろうと考えている由里子の足はスタスタと軽く、直ぐに椅子の前に着く。


そして椅子の上に、椅子には触れない様に鍵と紙を置いた。