「わ、私も……。知らない……です」
由里子に続いて桜も知らないと答えるが、吃りながら答える桜は本当に何も無かったのか少し怪しい。
「俺だけかよ。じゃあ、鍵は?」
「鍵?」
首を傾げる哲夫に顔を向けた守が、ズボンのポケットから鍵を取り出す。
「俺の憎む奴の足枷を外す鍵らしいぜ」
「いや、私の見た部屋には鍵もなかったが」
「他の奴等もか!?」
守の威嚇するようなそのもの言いに、皆首を竦めるだけだ。
「役に立たねぇ奴ばっかだな」
再び舌打ちと共に守から発せられる暴言に由里子の眉間に皺が寄る。
本当は鍵だってあった。
でも、それを守へと教えてやる義理なんて無い。
こんな協力しようという意思が全くない奴なんかに……。
そんな黒い感情が由里子の中でぐるぐると渦巻く。
「守君の憎む人が、どんな人とかは分かってるのかい?」
「お前らには関係ねぇよ」
「まあ、そりゃそうだね」
優しく聞いてみても、ぶっきらぼうにそう答える守に流石の哲夫も苦笑いを漏らす程。
それほどまでに時任守という男は自分の事しか考えていないのだ。


