「やっぱり何も知らないか」


その呟きに反応するように、先程のもう一人の男の声が響いた。


「ちぇー、役に立たねぇな。これからどうすりゃいいってんだよ!」


声のする右手側の方へと再びユリコが顔を向けると、その男はユリコを見て機嫌が悪そうにチッと舌打ちをすると直ぐに目を逸らす。


唇を尖らせて文句を言っていたその男は金色に染めてからだいぶ経つのか、頭頂が黒色になっているのがやけに目に付く。



知らない人ばかり。

誰か知ってる人は……。



そう思ってキョロキョロと白い部屋を見渡せば、人の前に由里子の目に飛び込んで来たのは、部屋の真ん中にドンと置かれている椅子だ。


しかも、この椅子はただの椅子ではない事は普段はOLをしている由里子でも分かる。


ガッチリとした木製の椅子には座った人を固定する為のゴムベルトが何本も付いており、さらに頭部に着けるヘルメット型の物には電機を通す針金の様なものか刺さっている。


テレビドラマや映画でたまに目にするその椅子とほぼ同じそれ。


いわゆる死刑執行用の電気椅子だ。