ただ修二の中で1つだけ謎が残るのは、福西は妻と娘を人質に取られたと言っていたが、実際は福西の元妻と娘は誘拐されておらず、ずっと普通の生活を送っていたという事だ。
どうやったのかは分からないが、これも犯人が上手く細工したのだろう。
ペラッとパンフレットの次のページを捲った時、
「じゃあ、行ってきまーす!」
というカズキの声が響いた。
丁度、学校に行く為に家を出る時間になったのだ。
その声に修二は顔を上げると、「カズキ、ちょっと」と手招きをして玄関に向かっていたカズキを呼び戻す。
何?と首を傾げて修二に近付いてきたカズキに、もっと近くに寄れ…という意味を込めて、更に手招きをする。
そして、座っている修二の真横に来て不思議そうな顔をしたカズキに、そっと耳打ちをした。
途端にカズキは顔をパアッと明るくさせ、何度も首を縦に振る。
そんなカズキのランドセルをぽんっと押す様に軽く叩くと、
「よろしくな」
そう言って修二が微笑んだ。
カズキが家から出たからか、玄関の閉まる音が聞こえると、再びパンフレットへと視線を落とす修二。
そしてあの日の事を思い出しながら、フッと自嘲気味の笑い声を漏らす。
あれは、彼女からの最後通告だったのかもしれない。
そして多分、協力をしなかった僕はその通告を無視した事になるんだろう。
そんな事を考えながら。
「きっと次に、カズキに何か悪影響のある事をしたら、…………僕は彼女に殺されるんだろうな」
修二がポツリと呟いたその言葉は、誰の耳に入る事もなく消えていった。


