だが、修二の反応を見て福西も焦ったのか、慌てて言葉を付け足す。
「だが、勘違いしないでくれ。私は、ただ脅しに屈しただけだ。まあ、脅しに屈した時点でいい奴ではないがな」
「脅し…ですか?」
「ああ。妻のエリカと娘のチエリが捕まってるんだ」
人質を取られ、仕方なしに自分達を誘拐、監禁した。確かにそれならば、福西の行動は頷ける。
しかし、それだけで福西を信用するには至らない。
「本当の話…ですよね?」
訝しげな表情をしてそう訊き返す修二に、福西の眉尻が困ったように下がる。
そして、
「勿論本当だとも」
と言った後に、ほら…と自分の左手を持ち上げて見せた。
その瞬間、カンッと鉄がぶつかる音が響く。
福西の目の前にあるデスクの脚と、彼の右手首が手錠で繋がれているのだ。
「私もここに捕まっていて、動く事すら出来ない」
苦笑混じりに言うその言葉は紛れもなく本当の事だろう。
福西の周りにはそれを確信させる物が揃っているのだから。