明るかった5角形の部屋から、真っ暗な部屋の入り口へと手を掛けると、そこからは勢いよく梯子を登りきる修二。


上の部屋に入ってみれば、そこは真っ暗ではなく守の入れた部屋の様に薄暗い程度。


修二が暗さに慣れない目を何度か瞬きさせていたその時、部屋の奥から「おいっ」という重低音の呼び掛ける声が聞こえてきた。


突然の声にビクッと肩を揺らすも、スッと声が聞こえてきた方へと目を向ける。と同時に、オフィスチェアに座っている男と目が合った。


「君は、……本当に尾木修二君か?」


薄暗さに慣れてきた目に映るその男は、そう言って眉間に皺を寄せる。


ボサボサの黒髪に無精髭。そのうえ、真っ黒な上下のスウェットを着ているその男。


「今は、赤坂修二ですけど」


修二の答えに溜め息混じりに「そうか…」と漏らすと、僅かに視線を修二から逸らす。


自分の前の名字を知っている事が気になり、修二は数秒無言のままじっとその男を見続ける。


だが明らかに不審なその男は、修二の視線を気にする事もなく、一向に座っているオフィスチェアから動こうとしない。