「ニコチンが大量に溶けた酒です。……美味しかったですか?」
ニヤニヤと笑いながら再びそう訊く修二は、哲夫の答えを求めているわけじゃない。
絶望に染まる哲夫を見たいだけ。
「お……まえ……」
喉から絞り出す様に言葉を紡ぎ、修二を睨みつけようとするも、ぐらぐらと揺れる視界では焦点が定まらない。
それを分かっているのか、修二の嫌な笑い声が哲夫の耳に響いた。
「普通なら直ぐに嘔吐して死には至らないんですけど、吐き気止めの役割をする薬を飲んでると、嘔吐しないんですよ」
「く……すり」
「頭痛薬。……飲みましたよね」
哲夫が頭痛薬を飲んだのはかなり前。
こいつ、……そんなに前から殺そうと計画してたのか?
いや、あの時は自分以外にも恩田桜も薬を飲んだ筈。
全員を殺すつもりだった?
まさか、……こいつがここへ自分達を監禁をした犯人?
そんな疑問がどんどんと溢れてくるが、激痛が走る哲夫の頭ではその疑問は答えを見付けてはくれない。