「毒を持ってたのか?ですか。僕は毒なんて持ってませんよ。僕の部屋にあったのは、煙草と酒とグラスと頭痛薬だけ。その点では嘘は言ってません。
強いて言えば、気付いていると思いますけど、僕の入った部屋にも憎む相手がいると書かれた紙と鍵がありましたね」
紙と鍵があったなんて、そんな事は当然気付いてる。
毒を盛られた以外に今のこの状態の説明が出来ない。
なら、……修二君が嘘を吐いてるって事か?
協力しなきゃならない状況で、……何故?
色んな考えが哲夫の頭を駆け巡るが、どんどんと悪化していく状態のせいか上手く思考が纏まらない。
その時、ふと思い出したかの様に修二が口を開いた。
「ああ、でも。…………毒は作ってみましたけど」
「つくっ……た?」
哲夫の消え入りそうな声に、再び修二がクックッと喉を鳴らして笑う。
「知りませんでしたか?煙草に含まれるニコチンって凄い猛毒なんですよ。大人だったら、煙草を2~3本で致死量だそうです」
「でも…………」
「煙草なんか食べてない…ですか?…………ニコチンって、……酒によく溶ける性質があるんですよ」
「さ、……さっ……きの……酒」
お祝いの為の酒なんかではなく、人を殺す為の酒。
それを飲んでしまった事に血の気が引いていく。