「すみません。やっぱり何も変わりありませんでした」
哲夫の顔を見ると、そう言って頭を少し下げる修二。
「いや、私の方も何も変わってなかったよ」
「そう…ですか」
残念そうに溜め息を吐く修二だが、哲夫はそんな修二の様子よりも彼が両手に持っている物が気になって目が離せない。
「それよりも、何を持ってきたんだい?」
何を持って来たかなんていうのは見れば分かる。右手に酒の入っているだろう瓶、左手にグラスだ。
哲夫が訊きたいのは、何故それを持って来たか?なのだが、修二との会話に角が立たない様に敢えてこういう訊き方をしたのだ。
ここから出る為に協力したい相手を、今失うわけにはいかない哲夫にとっては言葉選びも慎重になって当然の事。
ただ、修二はそんな哲夫の気持ちなど知るわけもなく、何も気にしていないらしくへらっと笑って口を開いた。
「あっ。これは、僕の部屋に置かれていたお酒とグラスです。折角哲夫さんの手が自由になったので、お祝いにでもと思って持って来たんですが……。要らなかったですか?」


