グニッと本物の様に弾力のある人形の頬。
だがやはり人形だからか、指を離しても赤くなるなんて事はない。ただゴム製で弾力があるだけ。
その事に対して、虚しいという感情が哲夫の中に込み上げてくる。
痛みに顔を歪める表情。それこそが哲夫の感情を高ぶらせるものだからこそ、いくらそっくりに作られていたとしても人形からは何も得られない現実への虚しさ。
無意識に哲夫から漏れる溜め息が部屋に響いた。
その後、カチャッという音を鳴らしトイレのドアを開け、一応中を見る。
やっぱり、特に変わった所はないか。
そう思いドアを閉めようとした時、ふとトイレのロータンクふたの上に置いておいたサバイバルナイフが目に入る。
鋭い刃先には未だに赤い血の色を纏っている。
それに向かって哲夫が一瞬右手を伸ばし掛けたが、スッと手を引く。そして今度は洗浄ハンドルへと手を伸ばした。
ジャー………
水の流れと共に渦を巻き流れ落ちていく血。
それを確認した哲夫は、ふっと鼻で笑うとトイレのドアを閉め、5角形の部屋へと歩を進める。


