全員に向けて同じ内容の書かれた紙があったのだろう事は、ほぼ間違いないと言い切れる。
そして今までの情報を纏めると、自分の憎む相手は桜。由里子の憎む相手は守という事だけがハッキリしている。
だが、自分を憎む相手が分からないのだ。
幼児誘拐殺人犯なのだから、憎まれて当然。殺した子供の関係者、それに関わった者、子供を殺すという事に嫌悪した者。
哲夫を憎む相手は余りにも多過ぎる。
それを分かっているからこそ、自分を憎む相手が誰かを断定する事が出来ないのだ。
「まあ、でも。憎む相手は殺せたし。修二君は気付いていない様だし。……彼を味方に付けておけばどうとでもなる…か」
味方が1人いれば、どちらかがここから出られた時に助けを呼ぶという事も出来る。
ここの惨状も、鎖で繋がれた者を目にすれば、当然全て自分達を誘拐した犯人のせいだと思うだろう。
先程の哲夫との会話から、修二は幼児誘拐殺人犯を守だと思っている可能性が高い。
このまま自分が幼児誘拐殺人犯ではなく良い人という印象のまま、2人で協力して脱出を試みるのが一番良い手かもしれない。
そう判断するとニヤリと笑い、目の前にある人形の頬を親指と人差し指で思い切りつねった。


