「骨を折って外したって所だろうね」
床へとぶらんと垂れ下がった右手首は何処か歪に曲がっており、足首に至っては普通の状態では曲がらない方へと爪先が向いている。
「そう……ですか」
「それにしても、守君は出てくる気がないのかな」
守の入った部屋のドアは閉まったまま。出てくる気配は一切ない。
自分が幼児誘拐殺人犯だと噂されているのが聞こえたら、それを否定しにくるタイプだと思っていたが、違ったか。
そう思うと哲夫は、守の認識を間違っていたかもしれない事に少し首を傾げた。
「自分が幼児誘拐殺人犯だと気付かれて出にくくなってるのかもですね」
修二の言葉に思わず哲夫が苦笑いを漏らす。
自分を幼児誘拐殺人犯だと疑っていない事が可笑しくて堪らないのだ。
「なら、出てきてくれない方が助かるよ」
「怖い……からですか?」
怖い……からなんかじゃない。
修二君。
君が、守君が出てこない事で私の事を幼児誘拐殺人犯だと疑わないから。
だから、何故出てこないかは分からないが、彼にはこのまま出てきて欲しくない。
そんな本心を隠し眉尻を下げると、
「情けないが、そういう事だ」
そう嘘の言葉を告げた。


