最初からという事なら、……時任守がやっぱり幼児誘拐殺人犯だったのよ。

だから、私を恨んでた。



そう思うと、先に行動を起こせなかった悔しさから桜の目に涙が滲む。


その時、



カチャッ……ーー



というドアが開く音が響いた。


その音は守の部屋がある方からではなく、その真逆の位置から聞こえてきたものだ。


ただ今の桜は、顔が動かない為に誰の部屋のドアが開いたかを確認する事が出来ない。


それでも、音の聞こえてきた方向に居るのは哲夫と修二のみ。


コツン…、コツン…という足音と共に、ジャラ…、ジャラという音がゆっくりと桜の方へと近付いてくる。


その音が大きく桜の耳に響くにつれて、



この足音が、出来れば哲夫であって欲しい。



そう願ってしまうのは、修二に由里子の事を言い当てられたからだ。


守が幼児誘拐殺人犯だと分かった今、怪しい言動をした修二と何も怪しい事をしていない哲夫。比べるまでもなく、一番安全性が高いのは哲夫だ。