部屋に入るとドアを閉め、キッチンへと向かう桜。そして、2回目のゲームが始まる前に部屋に戻しておいたお茶の残ったペットボトルを一瞥した。


残りのお茶の量はかなり少ない。



これじゃ足りない。



そう思うと冷蔵庫の戸を開き、中からもう1本お茶のペットボトルを取り出す。


真っさらのお茶のペットボトルに、めいいっぱい入ったお茶。そのお茶の蓋を開けると、シンクに半分になるまで流し続ける。


皆が飲んだ後に見える様に。


お茶の量が半分になったペットボトルをワークトップに置くと、次はその横に置いていた青い小瓶を手に取る。


と、小瓶の中でゆらゆらと揺れる液体が桜の目に映った。


半分以上は由里子に使ったその液体。


それを今度は自分を守る為に使う。


桜の小瓶を持つ手が傾けられると、中の液体がペットボトルへと流れていく。無色透明のその液体はお茶に溶け込み、見た目の違和感は全くない。


桜は毒薬の入ったお茶のペットボトルに蓋をしながら、

「誰かを頼っちゃダメ。私がやらなきゃ」

そうボソッと独り呟いた。


そして蓋を閉めたペットボトルを胸に抱える様に両手で持つと、ドアへと向かってふらふらとした足取りで歩きだす。