そして再び置かれている紙コップの場所へ戻ってくると、自分の分を残し、毒薬入りを右手に。普通のお茶の入った紙コップを左手に持ち、修二の前へと向かう。
そして、両手に持っている紙コップを修二の前の床に置いた。
「あ、あの。これ回して頂けますか?」
そうおどおどした風に言えば、「分かりました」と快く引き受けてくれた修二。
ここまでこれば後は運任せだ。
修二から回ってきたお茶の入った紙コップを、哲夫はどうするかという事が全てに繋がる。
綺麗な紙コップと折れ曲がった紙コップ。
哲夫だって綺麗な紙コップを選びたいだろう。だが、今この場で全員を仕切っているのは間違いなく哲夫だ。
しかも、由里子は哲夫へと少しばかり心を許している様に思える。そして哲夫も今までの言動からどちらかというと、レディーファーストをするタイプの人種だろう事も推測される。
そうなれば哲夫が選ぶ行動は、自分が折れ曲がった紙コップを選ぶか、両方を由里子へと差し出し、由里子に選ばせるかのどちらかの可能性が高いのだ。
ただそれは絶対じゃない。
哲夫が毒薬入りのお茶を飲む可能性だってある。
だが、桜にとっては由里子を消す事が最優先であり、それに伴う犠牲などどうでもいい事なのだ。


