「私の仕事は営業でね。昼頃だったかな。車で営業先に行く為に自分の会社の駐車場へ着いた時、突然後ろから誰かに襲われて、口元へと何かを当てられたって所だ。

よく考えれば、あれで睡眠を促す薬を嗅がされたんだろうな。そして目が覚めたらここってわけさ」


哲夫の話に思わず由里子が息を呑む。


殆ど由里子と同じ状況だったからだ。ただそれも由里子だけではなかったらしい。


「僕はずっと家に居ました。ただ、自分の部屋に誰かが入って来たと思って振り返った瞬間に押さえ込まれて、哲夫さんと同じ様に口元へ布の様なものを当てられました。

その後は哲夫さんと同じです」


哲夫に続いた修二も突然拉致されたという状況だ。


修二に至っては犯人が家の中まで入って来たという事になる。


家の場所を特定して、更には家の中にも入って来るというのは突然の思い付きなんかで出来るものじゃない。


誰を連れ去るかも、周到に用意されていたのだろう。