深夜1時頃のことだった。これから起こる連続殺人事件の犯人はブラックコーヒーを飲みながら、書斎のデスクでパソコンのキーボードを打っていた。まさか自分がこの1ヶ月の間に追い詰められるだなんて、到底考えもしないで。真っ暗な部屋の中でディスプレイの画面の光だけが、顔を照らしている。その表情は余裕綽々で薄ら笑いを浮かべている。

「私は思う。人は死ぬと天国へも地獄へも行かない。ただ目の前が段々とブラックアウトしていくのだとー」

打ち込んでいるのは犯行声明。自分でも、こんな犯行予告を堂々と警察に送りつけて、鮮やかに犯行を重ねるレトロなキラーはもうこの現代には私ぐらいだろうと思っていた。
 少し話は変わるが、犯人の家は高層マンションの20階で都会の夜景が綺麗に見える3LDK。こんな部屋にたった一人で毎日暮らしている。別に寂しくもなければ、家族が欲しいと思ったことも一度もない。ただ、自分がこんな部屋に一人で住み、好きなように生活しているということの優越感に浸りたいだけなのだ。そんな人間が何故今、これから連続殺人を起こそうとしているのかー
 誰もが疑問に思うところではある。