「ねぇ、和也くんどこぉー?」
あ、まだいたんだ。
「俺だけど?」
俺はそう言うと彼女の前まで歩いて行った。
透き通った瞳、風になびく綺麗な髪。
女優みたいだ。
するといきなり彼女が詰め寄ってきた。
途端に俺は一歩後ろへ下がる。
すると彼女はまた一歩踏み出し、俺はまた一歩下がる。
そう繰り返して、俺の背中が教室の壁に当たった。
バンっ!
彩奈は壁に腕を押し付けた。
いわゆる逆壁ドンというやつだろうか。
「あの…彩奈さん?」
俺は恐る恐る口を開いた。
「私たち、付き合いましょう。」
「はぁ!?」
そう発したのは俺ではなく明日香だった。
なぜお前が出てくるんだよ。
「あんた、急に入ってきて何なのよ!付き合えですって?自己中にも程があるんじゃないの?」
こいつはなんでこんなにキレてるんだろう。
「あんたには何も言ってないわ。私は和也くんと話してるの。」
「あんたに用がなくても私はあるの!だいたいね…」
「黙りなさい貧乳!!!」
教室がシンと静まり返った。
明日香はただ呆然としている。
「貧乳……私は…貧乳……。」
「わかったら自分の席に早く座りなさい?」
反抗するかと思いきや、明日香はすんなりと自分の席に着いた。多分今、精神がボロボロなんだろうな。