「女ってのはさ、暑さに強いんだって。」

「尋が暑がり過ぎなだけじゃない?」

「暑さだけじゃないよ。寒さにも強いんだって。いっぱい付いてる脂肪のおかげらしいぜ。」

「何よそれ?!私が太ってるって言いたいわけ~?」
僕を流し目でみる美紅。
速攻で弁解。

「一般論だよ…。」

ならイイ。とばかりに笑顔の美紅。

「尋季。美紅。いつまで缶コーヒーだけで居座る気だ?ウチはファミレスじゃねーんだぞ。」

「いいじゃん。誰もいねーし。」

「そうそう。それに私みたいな可愛い娘が店先にいたら客寄せになるかもよ?」美紅はウインクをしてみせる。

『竹島商店』僕と美紅の行きつけだ。そして、この髭面のオッサン。これでもまだ28歳。竹島哲仁。(てつひと)僕と美紅は「哲兄」と呼んでいる。

「たくっ…オメーらはウチか『UENO』しか行くトコねーのか?」

「美紅んトコは夕方から忙しくってさ。哲兄んトコは夕方からっつーか、いつも暇だからな。俺たち客として。ね。」
美紅と笑って顔を見合わせる。

「ね。じゃねーよ。たくよ~…あと10分だけだからな。」

「はーい。」

これが一日の締め。締めのラーメンとはよく言う。僕らには竹島商店で飲む「缶コーヒー」が、一日の締めだ。