御予約ありがとうございます。

夕暮れどきのこの時間。窓から見える風景は優しさで溢れている。

それは…親子が手を繋いで帰っていたり、仲のイイ兄弟が一緒に買い物袋をさげていたりと、そんな何気ないものだ。

時計を見ると、いつの間にか6時をまわっていた。

リリリリリッ……

今ではあまり見かけなくなった黒電話がなる。

「はいもしもし『UENO』です。」

美紗子さんの声が聞こえる。

「はい……来週の木曜……七時……はい、お待ちしております。御予約ありがとうございます。」

相変わらず忙しい。週末にもなると、お店の厨房は戦場になるそうだ。

「さて、そろそろ行くか。もうすぐ忙しくなりそうだし。」

「うん。」

席をたつ僕と美紅。ここでの勘定はいつも美紗子さんの奢りだ。哲兄とは違い太っ腹だ。

「ご馳走さまです。」

僕はペコリと頭を下げた。

「いいえ。また明日ね、尋ちゃん。」

「じゃぁね、お母さん。ありがと。」

「はいはい。気をつけてね。」

少しだけ、空が暗くなり始めていた。