「ま、待って!」
え。まだ、なんかあるの?
少し焦りと緊張の混ざった声が聞こえ、また振り返った。
「あー、いま急いでるんだけど……」
俺は嘘をついた。
別に急いでる訳じゃないけど、早く木下のところに行きたかったから。
それと、予感がしたんだ。
神楽さんは一瞬うつむき、また顔を上げて何かを決心したような目を俺に向けた。
そして──。
「……好きです」
え?
「好きになっちゃいました。だから……」
「……ごめん。神楽さんの気持ちはわかった。……けど、ごめん」
俺は彼女の言葉を遮った。
聞き間違えじゃなかった。神楽さんは『好き』って言ってた。
でも、好きって言葉を聞いた時にひとりの女の子が浮かんだ。
……なんでだ。
「……そっか。ごめんね?突然。ありがとう」
彼女はそう言って笑顔を見せた。
でもその目から光るものが。
ごめん。神楽さん。
「ありがとう。好きって言ってくれて」
「ううん。……じゃね」
と悲しい顔をしながら言って俺の横を通った。
俺はしばらくその場で突っ立ってた。
なんで、木下の顔なんか……?



