ありがとうをあなたに






「田口くん?」


ドアを開けて屋上に入ってきたのは同じクラスの一ノ瀬美春だった。


一ノ瀬はとくに目立つことはないが、俺の中では印象が強かった。


同じ現地校の村尾 百花からよく話を聞いていたし個人的に結構好みだ。


やわらかい話し方、フワフワした雰囲気、しっかりしてそうに見えるのに以外とぬけてるとこ。


ちなみにクラスの大谷からすれば典型的な普通にモテる子らしい。




俺はジンクスのことできているのだと思われるのはなんだか気恥ずかしくて


「ここは気持ちいいよな。一ノ瀬もそう思うだろう。」


そう話しかけた。


話をしていると一ノ瀬は本当にジンクスのことを知らないみたいだった。


なぜかこちらが安心するような、そんな話し方をする一ノ瀬。

初めてまともに話した一ノ瀬は村尾から聞いていた以上にいい奴だと思った。

"キーンコーンカーンコーン"


チャイムが鳴ってしまった。


俺と一ノ瀬は階段をかけおりた。


「きゃ!」

俺の後ろを歩いていたはずの一ノ瀬の声がした。

振り返るとバランスをくずして落ちそうな一ノ瀬がいた。

あわてて俺は一ノ瀬の肩を支えた。

「気をつけろよ。俺がいなかったら骨の一本や二本折れてたかもしんねーからな!」

「あ、ありがとう。今度から気をつけるね。」

一ノ瀬が俺の顔を少し見上げながら言った。 …その顔なしだろ…

「これだから一ノ瀬はほっとけないんだ…」

ついでてしまった言葉。

「ん?田口くんなんか言った?」


不思議そうな顔で俺を見た。聞こえてなかったんだろう。

別にいい、ていうか聞かれてなくてよかったかな。

「なんでもねー。ほらいくぞ!」

そう言って俺は階段を駆け下りた。