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この春、俺はアメリカに来て六年になる。
田口 涼太 中学三年
日本にいたら受験とかなんとか言ってるんだろう。大変かもしれない。
いやでもきっと彼女とか作って青春をエンジョイしているかもしれない。
俺らが通う日本語補習校にはある伝説がある。
桜が満開の季節、雲一つない青空の日に一緒に空を眺めた男女はずっと一緒に居られる。
これは初代の高等部卒業生たちがそうだったから、という理由で始まったジンクスらしい。
その後も何組かここに通った人のなかでそうなったカップルもあるらしい。
まぁあくまでジンクスなんだけど。
そのジンクスを信じていたわけでわないが、今日満開の桜に雲一つない青空が広がっていたから屋上に行ってみた。
いままで来たことがないわけではないが今日は特別。
少し期待を胸に屋上へ上がった。
そこにはだれもいなかった。
予想通りだといえばそうだが少しがっかりした。
せっかくきたんだし、とひとりで空を見ていた。
いつも景色の綺麗なとこだが今日は一段と綺麗に見えた。
"ガチャ"
ドアの開く音がした。
