「たまご焼きもーらい!」

「あっ!」



私のお弁当箱の中からひょういっと奪うとそのまま口に頬り込む。
嬉しそうに笑顔で頬張る姿を見て、毒気を抜かれてしまった。




「おいしい!すごくおいしいよ、結芽ちゃん!」

「そんなことない。焦げたし、うまく巻けてないし」



言ってしまえば今日のは失敗だ。




「僕、甘い卵焼き好きだから、凄くおいしいよ」

「・・・そう」

「いいなぁ!私も結芽の卵焼き食べたい!」

「明日から、多めに作ってくる・・・から」

「ほんと!?やった!」




なんでそんなに嬉しそうなんだろう。
たかが卵焼きひとつで。
たまご焼きなんて、誰が作ってもおんなじだし特別なものなにもないのに。