喫茶店に入り、向かい合って座る。
頼んだ紅茶とコーヒーが目の前に置かれ私はみゆさんを見上げた。




「あの、待ってたってどういう事ですか?」




あれから、一言もしゃべらなくなってしまったみゆさんを誘ってここに入ったのは私だ。
どうして春兄の婚約者と二人でこんなところに・・・。
いってしまえば、ライバルなのに。

ライバルって・・・、私はそこまで達していないだろうけど。



自分の気持ちに蓋をして、春兄を遠ざけたのは私。
妹みたいな、家族みたいにしか春兄は思ってくれないことに勝手に傷ついて逃げたのは私。

それでも諦められないバカな自分。




「・・・お願いが、あって・・・」

「え?」

「春くんを・・・返してほしいの・・・」





消え入りそうな声で絞り出すように告げられた言葉に、一瞬時が止まったように感じた。
春くんを、返す?
春兄を返すって、どういうこと?




「あの、どういう事ですか・・・?」