その腕は私を抱き起こすと階段下のそのスペースに私を引き込み松葉杖もすばやく回収するとギュッと私を強く抱きしめた。
戸惑い身じろぐ私を抱き締めて制するその腕。



「しっ」



小さく呟かれビクッと肩を震わせると、裏口から春兄が通っていくのが見えた。
階段下のデットスペースにいた私たちには気づかず通り過ぎていく。




「・・・臣?」



ふいに浮かんだ名を口にすれば、私を抱き締めていた腕はほどかれ体が離された。
紛れもなく臣で、切なく表情を翳らせながらもフッと笑った。
似合わないよ、そんな笑顔。



「なにしてるの」

「授業に戻る気になれなくて、ここで待ってた」




私を抱き締めて背中に回っていた手は私の肩を滑り、手を握る。




「臣・・・ごめんね」

「え?」

「私が、そんな顔させてるんだよね」




私のせいで臣は・・・。
臣はいつだって笑ってて、おちゃらけてて。
そんな臣を、私は傷つけた。