その時。


「――…ん、」


気が付いたのだろうか。
一瞬、眉間をギュッと寄せた畑野くんが、ゆっくりと目を開く。


「……大丈夫?気が付いた?」

…彼が眠っていて、ある意味良かったのかもしれない。
少なくとも私にとって、彼と言葉を交わす前に現実を確認出来たことは、突然の再会に波立った心を鎮めるために必要な時間だったと思えるから。

区切りを付けた自分にほんの一瞬浮かんだ迷いを、振り払うことが出来たから。

「…………え?須藤?」

彼の視界に私が認識されたことに、切なさと苦しさと懐かしい愛しさが心を掠めても。

「久しぶりだね、畑野くん」

乱されることなく極めて冷静に、感情を出さないように声をかけて。