今更気付いてはいけない想いを。

振り返ってはいけない過去を。

いつまでもいつまでも引きずっては、何処かに最善の答えがあるんじゃないかって模索して、戻れない壊れかけた橋の上を、果てが見えることを願って歩き続けていたんだ。

そして今、向こう岸で手を伸ばしているのは慶介さんで。

どんなに後ろ髪引かれる強い何かがそこにあると分かっていても。
振り返ってしまえば足元から崩れていくだろう現実が今の私にとって愛おしさに溢れるものならば……もう、振り返ってはいけない。


慶介さんのことが大好きだ。
彼を傍で支えたいと純粋に思う。


乗り越えられなかったあの日の傷はもう美化されて、本来の痛みなんてとっくに消え失せて、残ったのは少し綺麗に見える想い出のみ。

それを今更振り返って、ひとつひとつ紐解くことが必ずしも正しいとは言えないと思う。