『…脩二が、自分の気持ちに真っ直ぐ向き合えますように』

念じるように呟いた梓はそれ以上何も言わず、両手を放すと再び駅に向かって歩き出した。



―――もしも、友達のままなら。

同じ夢を見て共に学んだ仲間として、いつの日か再会を喜ぶことが出来たかも知れない。

けれど、恋人という関係を築き、こんな風に終わりを迎える俺たちが、この先気安く懐かしさに触れることは、恐らくないだろう。

折りたたまれた手の中に残されたものを確かめることもなく、ただ握り締めながら。

……俺は、二度と振り返ることのない背中を見送るしかなかった。