「濠と恋人夫婦になりたい。
そんな甘えたことを口にする年じゃないのもわかってるし、濠との付き合いの長さを考えたらそんな言葉は似合わないって思うけど。
いつまでも濠に夢中で幸せな、恋人夫婦のまま年をとっていきたい」
「恋人夫婦? いいよ、どんな言い方をしても、俺の透子への気持ちは変わらないし。
それに俺たちは溺愛同士。結婚だって溺愛結婚だ」
「溺愛結婚した恋人夫婦……? なんだか照れるのを通り越してばかばかしいくらい幸せな言葉だね」
「いい大人が使うには、幸せすぎる言葉だな」
濠はそう言って大きく息をつくと、体を椅子の背に預けた。
視線を天井に向け、何度かまばたきを繰り返す。
「ホッとした」
「え?」
「いや、透子が一生忘れないようなプロポーズをしたいって長い間考えていたけど、慌ただしく入籍だけ済ませたから気になってたんだ」
「そんなこと……いいのに。濠と結婚できただけで幸せだし、満足だったのに。
だけど、うれしい。このダイヤも薔薇もキャンドルも一生忘れない」

