「いいよ。濠と結婚して、濠を幸せにしてあげる。
毎日これでもかというくらい愛してあげるし抱きしめてあげる」
「透子……」
「だけど、私がそうするためには濠が私をずっと愛してくれなきゃだめだからね。
濠から愛されることだけが私の幸せだから。
ちゃんと愛してもらって、充電しなきゃ、私は私じゃなくなるに決まってる」
そう言って、私はまばたきを繰り返した。
目の奥がじんわりと熱くなるけれど、それをやり過ごすように深呼吸を何度かすれば、涙がぐっととどまってくれたのがわかる。
今は、泣きたくない。
濠が改めてプロポーズをしてくれて、指輪まで用意してくれるというサプライズがうれしくないわけはない。
この場に立って、食事をしている人みんなにダイヤの輝きを見せびらかして、私がどれほど幸せなのかを叫びたい。
……まあ、そんなこと、絶対にしないけれど。
濠がフランスに行っていたときの七つの宿題を全部たしても、今私が感じている驚きには敵わない。
指輪をもらったからそう思うわけではない。
入籍を済ませた今、結婚式に向けて忙しく過ごしている中で私を思いこの時間を用意してくれたことがうれしくてたまらないのだ。

