「わかってるってことだな」
土谷さんの腕に半ば首を絞められるように力をこめられ、必死に首を縦に振る。
しつこく念を押す硬い土谷さんの声に怖さを感じたとき、坂木さんの声が鋭く割って入る。
「雄大、高野さんを離せって!」
一見土谷さんの方が身長がある分力も強そうなのに、坂木さんは土谷さんの腕をこじ開けて私を救出してくれる。
力強く腕を引っ張られて勢いのまま坂木さんの胸の中に抱き止められる。
「ごめんね、高野さん。雄大、悪いやつじゃないんだよ。雄大も、何熱くなってるんだよ」
すぐ頭の上から落ちてくる声と体勢が普通の状況じゃないことのほうが大問題で、身を硬くして思わず息を細くする。
抱きしめられているとも取れる状況を勘違いするなって言うほうが難しいのではとか思ってしまう。
「真理、いい加減八方美人やめろ。この間の樹里菜嬢といい、美貴嬢といい、お前の女遍歴に辟易してんだ。自粛してくれ」
あっさり出てくる女性の名前に坂木さんのもてっぷりを痛感する。
たぶん、その二人に留まらないのだろう。
柔らかい雰囲気、甘い声、整った顔、気持ちよく過ごせる言葉の選び方、大事にされてると感じてしまう対応。
私も勘違いする一人に手を挙げてしまう。
「変な言い方しないでくれ。僕は誰に対しても真摯に対応してるだけだ」
ああ、これが坂木さんの本音で、やっぱり期待しちゃいけないことを突きつけられた。
暖かい坂木さんの腕の中で唇を噛む。
「わーお、痴話ゲンカ?女の好み、同じだったんだぁ」
とげとげしい空気を無視したのんびりした声が私たちの間に投げ込まれる。

