顔もはっきりせず、シルエットだけなのに、そこにいる人物の存在ははっきりとしていて、親子の愛が感じられる。
「倉持先生って、愛情深い人なんですね」
突拍子もない言動と行動しか知らなかったが、この絵は先生の持っている優しい人柄を伝えてくれる。
「ええ、先生もさすがにご自身のお子さんの誕生に立ち会ったら感動したみたいで」
「え、倉持先生妻子持ちなんですか!」
予想外のモデルの存在と、倉持先生が家庭を持っているという事実に驚きの声を上げてしまう。
最初の印象が強すぎて、倉持先生が結婚しているイメージなど持てない。
坂木さんは一瞬目を泳がせて、片手で口元を覆う。
「ええ、あれで父親なんですよ。でも、詳しい個人情報は公開してないので、僕の口から言うのはこのくらいにさせてくださいね」
あまり突っ込んではいけないプライベートな話に坂木さんはさりげなくこれ以上の追求を避ける。
「もちろん。人それぞれいろいろ事情があるでしょうから」
興味本位で根掘り葉掘り人のプライバシーを聞くものではない。
本人が教えたいと思ったタイミングで、機会があれば聞けばいい。

