「確かに、坂木さんにまた会えることも楽しみに思ってました。でもネックレスを取りに来たのは嘘じゃないし、ココに来たのだって坂木さんが招待してくれたからです。お会いするのも、たぶん今日で最後じゃないかと思ってますから、ご心配なく。それに、安物に見えるかもしれませんが、ハンドメイドのお金で買えない一点もので、私には大事なものです。高級な芸術品を売っている人にわからない程度のものかもしれませんが」
自分で言っても悲しくなる内容と精一杯の嫌味を言い返し、唇を噛む。
土谷さんからしてみたら、大事な友達の坂木さんに下心満載で近づいてくる女の一人だと思っているのは、わかる。
でも、せっかく知り合った新しい世界を垣間見ることも嫌な顔をされなけるばならない謂れはない。
坂木さんが優しいのは、きっと責任感が強いからだとわかっている。
そんな人に、こうやって知り合えただけでもいい経験だ。
隠そうとしていた下心を改めて自分で言わされて、自覚させる土谷さんを少しだけ憎く思ってしまう。
しかも、さきほど心に決めたお相手がいることを聞いたばかりだ。
人のものを横取りするほどのバイタリティーも、それを肯定する倫理観もない。
目をそらさずに土谷さんの言葉を待っていると、がしがし頭をかいてしかめっ面をする。
「あー、うー。またやっちまったな」
思ったよりすぐに弱い言葉が出てきたことに肩の力がふと抜ける。
「ネックレスのことは言いすぎた。一点ものの価値は普通よりわかってる職業のはずなのに、悪かった。今日で最後のつもりなんだな。なら今は歓迎してやるよ。ゆっくりして行けよ。折角だから、案内しようか、佳苗ちゃん?あれ、佳苗ちゃんだったよね。あ、ストーカーになったら、容赦なく警察突き出すからな」
直美たちの話を聞いていたからもっと徹底的に妨害されるかと思ったら、土谷さんは怒っているような空気をあっさり引っ込めたので、かき集めた覚悟は軽く突かれた程度の影響しか感じず、肩透かしをくらう。

