陽だまりの天使

「どっかで見たことある顔だと思ったら、バレンタインの時の佳苗ちゃんか。ノーマークだったぜ、トンだ大穴だったな。何しに来た?真理に会いに来た?それとも、俺に会いに来てくれたなら嬉しいなぁ」

絶対に嬉しいだなんて思ってないだろう凄みのある笑顔に、堪らず首をすくめる。

元々身長もあるのに大股で威圧的に近づいてくるだけで怖い。

「く、倉持先生の作品見に来ただけです。ネックレスを返してもらう約束もしていましたし」

必死に建前を伝えて、手にしていたカバンの柄を強く握り締める。

何も悪いことをしているわけではないのに、坂木さんと仲良くなることも、ギャラリーに来ることも全面的に反対だろう土谷さんの前だといけないことをしているような気になってしまう。

「ふーん、それだけ?下心なしで?名前も知らないおっさんの作品みたいとか思うわけ?あんな安物っぽいネックレスくらい郵送でも構わなかっただろ」

人間は欲深いというけれど、知り合いという距離を縮めたいと思ってしまう、私も間違いなく欲深い。

下心が全くないかと言われると1%くらいあったことは否定できないが、妹が作ってくれたネックレスのことを悪く言われたことには素直に飲み込めなかった。

自分でもひと時の夢を見ていたのはがわかったからこそ、あんまりにも言われっぱなしでも悔しくて背の高さを利用して見下ろしてくる土谷さんに負けないよう顔を上げて真っ直ぐ見返す。