扉を引き開けて坂木さんが優雅な一礼をして楽しそうな笑顔で店内に招き入れてくれる。
「ようこそ、お越しくださいました。高野様のご来訪を心よりお待ちしておりました」
「お招きいただき光栄でございます」
大げさな振る舞いと堅苦しい挨拶の坂木さんに、私も深深と一礼すると、二人して噴出す。
「ずいぶん立派なパーティに連れてきちゃったみたいだ。にぎやかではないけど、どうぞ」
「画廊がにぎやかだったら逆に驚いちゃいます。お邪魔します」
改めて、初めて足を踏み入れるギャラリーに入ると、まず目についたのは、店の中央に水面のきらめきが美しい水溜り。
・・・ではなく、よく見ると、光沢のある水色の布が一枚敷かれて、草花や石に見立てたものが並べられている。
店は奥に長く続いていて思ったより広い。
美術館と同様に厳かな静けさを保った店内には、私以外に2人組のお客さんが入っていて、背の高い土谷さんが少し身を屈めて接客しているのが見える。
「ちょっと荷物、置いてくるね。好きに見てて」
「あの、これよかったらみなさんでどうぞ」
忘れないうちに用意していた手土産を渡す。
別に家にお邪魔するわけではないけれど、何か買い物に来たわけでも、入場料を払うわけでもないので、悩んだ末持ってきた。
「ああ、気を使わせてしまったみたいで、ごめんね。ありがとう」
坂木さんは慣れた様子でお土産を受け取ってくれてほっとする。

