「坂木さんはきっと遅刻なんてしないと思います。想像できないですもん。5分前行動とかしそうですよ」
あまりに容易く王道のやり取りが想像できてしまう。
私が待ち合わせ場所に着いて「お待たせしました」って言ったら「今来たとこだよ」なんて・・・顔がにやけてしまう口元にカップ運んで隠す。
落ち着いた静かな店内では少し声のトーンを押さえなければならないので、同じテーブルに二人で顔を寄せ合って座っているのは、どこか近しい関係を感じさせて気恥ずかしくなってくる。
ましてや、好意を寄せている相手。
真っ直ぐ坂木さんの顔を見つめ返すのは難しくて、何度も視線を上げては恥ずかしさの限界を感じてカップに視線を落とす作業を繰り返してしまう。
「確かに時間にルーズなつもりはないけど、僕も急な案件で待たせるかもしれないから、待ち合わせは心地よく長居ところで待ち合わせにしようね。そろそろテイクアウトの準備もできたみたいだし、行こうか」
「はい」
交される可能性が低い約束だとわかっているつもりでも、そんな風に言ってくれる坂木さんの言葉が嬉しくて、素直に頷く。
最初に頼んでいたのだろう白石さんが持ってきたテイクアウト用のコーヒーとボリュームのあるサンドイッチやマフィンなどを受け取って、坂木さんとともに店を出る頃には身体はすっかり温まって、借りていたコートも坂木さんは断ることなく受け取ってくれた。
「結構たくさん買っていくんですね。ギャラリーのスタッフ分ですか?」

