初めて会った時も手を取られたけれど、これは一般男性の普通のスキンシップなのだろうか?
過度ではないかと変な期待をしてしまう接触も、けして嫌ではない。
かじかんだ手をほぐす温かさは優しい。
嫌どころか、逆にどこか嬉しいと思ってしまう都合のいい自分が恥ずかしくて、とても顔を上げられないでいると、坂木さんは一人で納得して口を開く。
「うん。このまま風邪を引かせたくないし、付いてきて」
坂木さんは手早く自分が着ていたコートを脱いで、どう反応したらよいかわからず固まっている私の肩に掛けてくれる。
コートを着ていても冷え切った身体を改めて自覚し、ようやく呼吸の仕方を思い出す。
坂木さんに肩を抱かれ、有無を言わさず少し歩くと、到着したのは落ち着いた雰囲気の喫茶店。
坂木さんは喫茶店の店員さんに声をかけ、適当な席に私を座らせる。
すぐに年配の女性店員さんが湯気の立つカップを二つ並べながら坂木さんの頭を小突く。
「常連さんだから特別よ?うちはセルフサービスなんだから」
「すみません、白石さん。神対応ができる白石さんは今日も素敵ですよ」
照れ隠しなのだろう、坂木さんの背中を勢いよく叩き、もう!ごゆっくり、なんていいながら会釈して立ち去る白石さんと名前まで覚えている店員さんに私も会釈を返す。
店員さんとのやりとりがあまりにも親密でそれだけ常連客として顔なじみである以上に、店員さんとそれだけ仲良くなれる坂木さんの人柄を垣間見た気になる。

