そんな七夕の今日、
母から貰ったお金で誕生日プレゼントを買いに街では大きめなショッピングモールに来ていたわたしはエントランスの近くに
大きな笹を見つけた。


その近くにはたくさんの短冊とたこ糸。
ペンも備え付けられていて、
よーするに、【願い事を書きましょう!】
ってことなのだろう。


ふらっと
そのテーブルに歩み寄った私は
何を書こうかと頭の中でかんがえはじめた。





うーん ……うん。
やっぱりどれだけ考えても私の願いはひとつしかない。

黄色の短冊にオレンジのペンをすらすら、とはしらせた。

【強い自分になれますように。】

毎年、何かあるごとに願っている願い事。

お正月、参拝の時に。
桃の日、女の子らしくなんていいから、と。
クリスマス、私がほしいプレゼントはそれなのだ、と。

そして、七夕。
毎年のように願っている。



まぁ、叶った試しこそないが。


書いた短冊を笹の高めなところに吊るし、
心の中でまた、願い事を復唱してから
誕生日プレゼントを買いに、目的のお店へと向かった。


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欲しかったものを買えて、ご機嫌な私は
ルンルンで家に帰った。

夕食の時には大好きなタルトケーキが出て、
とにかくハッピーな1日だった。




今日ももう終わりか、と思いつつ
ベッドにはいる。


寝つきがいいことだけがとりえの私がその日はなんとなく眠れなくて
ベッドに横たわってから30分後。やっと、夢の中へと落ちていった。




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「…え。ここどこ?」

さっきまで自分の部屋で眠れないー、と思っていたら
急にここに来た感覚。


ちなみに、こことは
宇宙みたいな感じで、星がキラキラ輝いてる。


夢…だよね? 私滅多に夢、見ないのに…。


夢だ、という自覚は意外にも
すとん、と心に残った。



「う…っく.  ひ…ぃ…っく」

え?

どこかからしくしくと泣く声が聞こえた。


私の夢なんだからすぐそばにいるだろう、と、思って
きょろきょろあたりを見回すと、
大きな赤い橋のある向こう側に大きな笹の木があって
そこに、体育座りで泣いている女の人の姿があった。


格好からして織姫。ということはここは天の川の近くというのはわかったが幸せでいっぱいの彼女が、何故泣いているのかわからない。




とりあえず、その天の川にかかっている赤い橋を渡って声をかけてみることにした。




「あの?どうかしましたか?」

とんとん、と織姫の方を叩いてからそう声をかける。

顔を上げた織姫は、絵本で見たのより美人で
品位が、風格が、オーラのように現れ出ていた。


「あ、あなたが!救世主なのね?!」

「は?」

「お願い!彦星を助けてほしいの!」

 と、織姫は訳のわからないことをいったあと
私のぱじゃまのズボンをがっしりと掴んで
離さない、とでも言うように、私を見上げた。