「暴徒化って…そんな大げさな。」
エレナはふふっと笑いつつも困ったように目尻を下げた。
「なんだか色々誤解をなさっているようですね…
確かに両国での小競り合いは起きているようですけど、
それは本当に一部の反政府の人達によるものであって、根本的に大きな確執はないようですよ。
まあ、距離もありますし、通行手形の発行やらで行き来は多少は面倒ですけれど。
…先生は、もう少し世間の動きと女心を学んだ方がよろしいのでは?」
エレナが茶化すように言った言葉に、ジルは頬が熱くなるのを感じた。
それを悟られたくなくて、彼女を睨みつけた。
「じゃ…あ、ラルフとはまた会えるのか?
エレナは、ここへ帰ってくるのか…?」
「冬の間は、ちょっときついかもしれませんけれど、
初夏になれば山の雪も溶けて、あちらとも行き来できるのではないでしょうか?」
「そう…か。」
ほうけたように呟くジルの顔を、エレナがいたずらっぽく微笑みながら覗き込んできた。
「私はもちろん、先生が許してくださる限り、ここにおいていただきたいです。
ラルフ様がいらっしゃらなくても、
ここが雪に閉ざされてしまっても、
また、春がきて道が開かれてもいつだって…、
私はずーっと、お傍におります。」

