暗がりの中で唯一光を放っているのはエレナの持っている洋灯だけだった。
それをもつエレナの手が細かく震えている。
「ど…して…」
ようやく、小さな声が彼女から発せられた。
ジルが聞き逃すまいと少し顔を寄せると、エレナは驚いたのか咄嗟にばっと顔をあげてこちらを見た。
色の白いエレナの頬が熟れた林檎の陽に真っ赤だった。
金色の大きな瞳がうるみ、ジルを映して揺れている。
怯えたような戸惑ったような、どこか熱に浮かされたようななんとも言えない表情を滲ませて。
それがむずかゆいような感情を湧き起こさせた。
「か…かわ…」
思わず言いかけて、はっと口をつぐむ。
「な、なんておっしゃられたのですか?」
「い、いや、なんでもない。」
上ずった声で聞かれて、それに答える声も上ずってしまった。
「おっしゃってください!」
なおもしつこく食い下がるエレナに、ジルは頬がじわりと熱くなった気がして、ふいっと視線をそらした。
「なんでもないと言っているだろう。」
「先生!」
「いやだ。」
ねだるように言うエレナをぴしゃりと跳ね除けると、彼女は小さくため息をついて、その目を伏せてしまった。
ふっと翳ってしまった彼女の表情に、ジルは慌てて顔をのぞき込んだ。

