神様の藥箋





彼は、若い頃から、女に興味はなく、年頃を迎えても触れるものは女の頬ではなく、薬匙に試験管。



そらんじるのは愛の言葉ではなく、薬草の名前などであった。



とうに嫁をとる年を過ぎて一心不乱に医術の道を極めてゆけば、いつの間にやら付けられたのは、神の手などという仰々しい異名だった。





医者として確固たる信頼と地位も築いてきたし、これからの人生好きなだけ医術に携わってゆけばいい。



と、呑気に考えていたのに、いつの間にか添うべき相手は隣に佇んでいて。





どちらが先に、ということなら間違いなくエレナからだった。